トヨタの競争力の源泉は徹底したモジュラー共通化にあり
わが国が誇るトヨタ自動車、残念ながら2008年は大赤字に転じてしまいましたが、このような瞬間風速的な要因を差っ引いて歴史的に見ていきましょう。
図-7は、バブル経済真っ盛りのトヨタ自動車の経営データですが、全社で管理している部品点数は、わずか120万点。一方、全社で販売している製品の種類は3.7万製品。この条件下で、MD指数を計算してみたところ、1984年は、37.7で1990年は、32.4という数値が出ました。自動車は、およそ3万点の部品で構成されているといわれているにも係わらず、MD指数はなぜこのような低い数値になっているのかというと、多様な製品種類の中で部品を広く共用化しているからだといえます。つまり、このMD指数というのは、製品の多様性との対比において部品の種類をいかに少なくしているか、ということを示す指標になります。
当時、トヨタ以外の自動車各社のMD指数は何と200前後。
トヨタは、新モデルの部品の50%を流用して新モデルとしてリリースしていました。一方、他社は、およそ、20~25%です。さらに、トヨタは、21世紀に入ってさらなる部品の種類削減活動、CC21VI活動に取り組んでいます。このようなトヨタの歴史的な部品共通化能力が財務基盤を強化し、商品競争力強化につながり、半世紀かけて世界一に上り詰めたのです。
日本の擦り合わせ能力を多品種一括企画・設計に活かす
さて、製品アーキテクチャと競争力の関係ですが、図-8のようになります。モジュラー型製品なのに擦り合わせ設計をしている状態で勝てるわけがありません。日本の一般的な電機メーカーはモジュラー型製品を擦り合わせで設計しているケースが多い状況です。韓国のS社やデルは、かなりの比率でモジュラー設計型だといえます。自動車は擦り合わせ型製品と言われていますが、やる気にさえなれば、モジュラー設計もできるはずです。しかし、実態は、「擦り合わせ型だから擦り合わせ設計をしている」というのが一般的です。一方、擦り合わせ型製品でありながらモジュラー型で設計しているのがトヨタやスカニアです。製品特性が擦り合わせだろうがモジュラー型であろうが、製品アーキテクチャがモジュラー型であることが、勝者の条件だと思います。
日本の製造業のイノベーションの道は、まず基本的な方向としては強みを伸ばし弱みを克服する。これが常套手段です。そうすると、弱みは擦り合わせ一本やりで設計していることになります。それをモジュラー型設計に変えていかないといけないのですが、欧米型と同じレベルの雑なモジューラー化では勝てません。日本企業の高品質能力を生かした新たなモジュラーデザインを確立する必要がある。これが、勝者の条件です。
モジュラーデザインとは、商品を群で見た事前の擦り合わせ設計のことだと考えて下さい。製品の多様化と部品の少数化というのは、相矛盾した事項です。製品を多様化すれば自然と部品も多様化しますが、製品の多様化を進めながら部品を少数化するという相矛盾した事項を実現すること。それこそ、擦り合わせ能力がないと難しいのです。日本が得意な擦り合わせ能力を遮眼帯設計だけに使うのではなく、多品種一括企画・一括設計に活かしたら、世界一のモジュール化の適性がある民族だ、といえそうです。これこそ、日本の製造業のイノベーションの道だと強く思います。
