クラウドコンピューティングの意味意義

日本の製造業・コンピュータ活用文化再考という表題で7回に渡ってアレコレ書いてきましたが、本日より、クラウドコンピューティングの製造業への活用について語っていきたいと思います。
日本の製造業は、海外拠点も含めた、全世界単位での、業務効率化、設備や部品の共通化を実現したダイナミックなコスト削減を恒常的に行えなければ、世界市場、特に強豪中国韓国のメーカー伍して戦えない状況だと言えます。一回一回、丁寧に、自社仕様にシステムを設計し導入していたのでは、新興国の旺盛な需要にスピードが追い付きません。こうやって考えて行くと、この時代、どうしても、クラウドコンピューティングの活用を検討せざるを得ない状況にあると考えます。私は、長年、生産管理システムの開発導入に従事してきましたが、工夫や英知をこらしたシステムを大事に囲いこむのではなく、クラウドの形でオープンに使えるようにし、国内外問わず多くの企業で業務効率化やコスト削減に活用してもらいたいと考えるようになりました。いわゆる事務作業のクラウド化ではなく、生産管理、物流管理、イーコマースなど、付加価値部分のアプリケーションをクラウドシステムとして提供できるよう、研究開発を進めています。これから暫く、クラウドコンピューティングをモノづくりに活用していく、意味意義や、最新事例などを考察していきたいと思います。

さて、まず最初に、クラウド・コンピューティングとは何ぞや?という点について、確認していきたいと思います。
企業のシステムは、サーバなどの大型コンピュータとデータベースやアプリケーションを各社それぞれ所有することで運用するのが一般的でした。しかし、2008年頃から出てきた「クラウド・コンピューティング」では、ハードやソフトウエアを自社で保有したり、ITベンダーから借りるのではなく、必要な機能、つまり美味しいところだけをインターネット経由で利用する業務システムの利用形態です。実際、クラウド活用して様々な企業がITコストの削減に成功しています。 似たような言葉として、ASPとかSaaSとか呼ばれることがありますが、新聞紙上ではこのところ「クラウド・コンピューティング」と言う言葉が定着してきているようです。

さて、この「クラウド・コンピューティング」も日本で受入れられるためにはいろいろなことを乗り越えて行かなければならないと感じています。 乗り越えるためには、そもそも「経営者自身がシステムを意思決定ツールとして利用する」ことに目覚めて頂く必要があると感じています。「クラウド・コンピューティング」とは、コンピュータ部門の自前主義とはまったく反対にある概念です。 独自のシステムを維持管理するためには、膨大な費用が発生します。また、システム部門が行わなければならない情報戦略的な仕事よりもシステムを維持することに主眼が置かれている企業を数多く見受けられます。
これは本末転倒と言わなければならないものです。
「クラウド・コンピューティング」を導入することでシステム部門は、システム維持管理から開放され、本来行うべき「情報戦略」について時間を割くことができます。また、その資質のないシステム要員を他の部門に配置転換することもできます。
新聞紙上で「自前システム構築するのと比べて、6、7割システム投資が削減される」と言われる理由はこのような無駄な費用をシステム部門から削減できるからでしょう。
また、ハードウェア及びその保守に膨大な費用を掛けていることも忘れてはいけません。
経営者自身がシステムを使うと言うこととシステム部門でシステムを作り続けることの違いをまずは理解しなければなりません。
システム部門の仕事は情報を迅速に整理し、タイムリーにユーザ部門に提供することです。 今まではそのためにシステム部門はプログラムを作り続けなければなりませんでした。 それが「クラウド・コンピューティング」を利用することでシステム部門の仕事は「情報の整理」や「ユーザ部門の要望収集」に変わります。
このことは情報戦略を構築するためのスピードアップと費用対効果をあげることになります。
そして、そのことを経営者主導で行うことに意味があります。

クラウドシステムの活用範囲の現状(2010年5月24日現在)

国内企業におけるクラウドシステムの活用を、既に報道されている情報からざっくり拾ってみました。
パナソニック、TOTO、富士ソフトABC、経済産業省、損保ジャパン、HOYA、広島県、リクルートといった企業が既にクラウドシステムを、業務アプリケーションとして導入もしくは導入プロジェクトとして進めています。活用用途の多くは、メール、スケジュール管理、顧客情報管理、といったいわゆる事務処理への活用が主流です。
唯一、パナソニックのファクトリーオートメーション(FA)の事業会社において、海外拠点との連携も考慮した工場の生産管理システムを、広島県では、電子申請サービスといった、企業は事業体の付加価値部分のアプリケーションのクラウド運用にチャレンジしています。
日本企業、特に製造業は、もの凄いスピードで増え続ける消費新興国の需要に、応じて行くために、かなりのスピードで、海外拠点を立ち上げていく必要に迫られています。海外拠点の機能は、生産、販売のみならず、一部の設計開発業務に至る、幅広い範囲を求められるようになりました。これまででは考えられないスピードで海外拠点を立ち上げ、現地でヒットする製品を次々投入していかなければ、中国韓国勢に負けてしまいます。そういう意味で、生産管理の機能まで含まれたクラウドシステムの活用は、製造業の海外複数拠点の立ち上げや、改善改革のスピードアップに効果を発揮し、製品競争力向上につながっていきそうです。また、システム導入工数の削減や、生産設備や部品の共通化にもつながり、大幅なコスト削減も実現可能です。